2008 Service de Restauration Profil 26

第26回現代レストラン・サーヴィス技術特別講習会

ジャン-リュック・フルセッタ

Monsieur Jean-Luc Frusetta

ジャン-リュック・フルセッタ

PROFILE

1968年誕生
1983〜1989年数多くの研修や様々な構成に添った特別研修活動を行なう。(レストラン、料理他)
1989年コンノート・ホテル(ロンドン)でシェフ・ド・ラン、トランシュール
1990年ホテル・リュテシア(パリ)でレストラン、バー、ブラッスリーの運営責任者。
1991年エコテル(グァドループ)でレストラン、バー及びストック、コストコントロールの管理責任者
1993年ル・グラン・ホテル(パリ)でレストラン、バー、宴会、ブラッスリー、ルームサーヴィスのサーヴィス責任者 ・サブマネージャー。カフェ・ド・ラ・ペのテラス責任者。
30人の部下から成るチームを指揮する。
・サブ・スチュワード。
40人の部下を管理し、年間500,000席分の売上に貢献する。
・コストコントロールの責任者、コンピューターを活用し各セクションの会計レジを分析し、コストコントロールへとつなげる。
1994年〜アルベール・ド・マン・ホテル学校(パリ)で、レストラン運営とサーヴィス技術主任教授 B.E.P.(職業教育免状)からB.T.S.(上級技術者免状)までのディプロム全課程に関する指導を行う。

その他

レストラン業に携わるプロの人材育成の為の専門書を執筆。(2002年ラノール・フラマリオン社より出版)
ホテル・レストラン業における初心者及び経験者の為の技術向上推進活動に貢献する。
若手から成人等幅広い層に対する専門能力の育成に力を注ぐ。
料理素材とワインや飲料の仕入れ・販売管理に関する情報処理システム網設置に携わる。
C.A.P.E.T.(職業教育教育者適性証)、P.L.P.2(職業教育第2レベル)、C.A.P.(職業適性証書)、
B.T.S.(上級技術者免状)、B.T.H(職業技術免状)、B.E.P.(職業教育免状)取得。

MESSAGE

親愛なる日本のサーヴィス人の皆様へ

良いレストランとは何か。
しばしば私たちは自らにこのことを問いかけます。この問いに答えるためには、私のメッセージよりはるかに長い文章が必要でしょう。
「いいワイン」と同じように、良いレストランとは、顧客が気に入る店でなくてはならならず、再び利用したくなる店でなくてはなりません。

レストランを訪れる人は、レストランの何が気に入るのでしょうか。それが前項の問いの本当の意味です。
その答えは無限にあります。
なぜなら、私たちの顧客は1人の個人として欲しているものを私たちが提供することを期待しているからです。
それ故レストランの成功は、何よりもまずプロのサーヴィス人が顧客を理解しようとする意志と能力があるかにかかっています。

それなら、優れたプロのサーヴィス人とは何でしょうか。
これは私によく問いかけられる質問であり、この問いに私はいつも次のように答えています。
つまり、プロは3つの優れた要素を持っています。1つは技術的知性、1つは精神的知性、1つは心の知性です。

技術的知性とは、難しいとされている技術や妙技と言われる技術を、正確かつエレガントに行うために必要なものであり、顧客の称賛を誘い、感謝と尊敬の気持ちを引き起こすものです。
プロの「人生」において、それは小児期にあたります。一歩ずつ、歩けるようになる時期です。
技術的知性は、私達の仕事の実践的な面を表しています。

精神的知性とは、プロの技術者であることに加えて、自分の企業の強みと弱みを理解し、適切な判断と解決策を講じることを可能にします。プロの人生において、それは青春期にあたります。
あらゆるものを再検討したり、自身に問いかけたり、新たな想像をしたりする時期であり、それによって、仕事の関係者の称賛と尊敬が得られます。
精神的知性は、仕事の科学的なアプローチです。

心の知性とは、機械や予めプログラムされたロボットによるルーティン化された動作ではなく、「人間」らしい思考形態を可能にするものです。新たな状況、新たな顧客、新たな仲間に、それぞれの特殊性を考慮した上で対応するのが、この心の知性になります。
プロの人生において、成人期にあたります。他者の文化の理解し、自分の文化をそれへと適応させる時期です。
それによって、感謝と称賛と共にお互いに尊敬の念が生まれます。
心の知性は、仕事の社会学的な面を表しています。

グローバル化によってあらゆる文化が「消費文明」という原理のもとで統一化されようとしている現在、私たちの仕事を、そしてそれを通して私たちの社会をどう発展させていくべきかを考える必要があります。

日本もフランスもその持つ特性を生かして発展しながら、自国の文化を保つてきました。
今日、これらの大切な個性を手放さなければならない時代になってしまったのでしょうか。
生き残るためには、商業や大多数という今の原則に従い、最終的には同じレシピを情熱を捨ててただ模倣して作らなければならないのでしょうか。私はそうは思いません。

私たちが迎えるまったく異なる文化的背景を持つ顧客は、私たちが安全を保証し安心感と満足感を提供することを期待していることはもちろんですが、同時にそれぞれの国の特徴ある文化をも求め、その「エスプリ」を知りたいと思っているのです。

しかしながら、私たちは日々変化する顧客のニーズに的確に応え続けるために、そのニーズを大きく変えている今日の根本的な社会変動を理解しなければなりません。

今回のプログラムは、私たちの仕事のこのようなエスプリと極めて現代的なヴィジョンを伝えることと、皆様がこの職業の将来に関して自分に問いかけてみることを目指しています。
なぜならば、この職業の今後の展開を決めるのは、ご参加の皆様一人一人だからです。

これまでの講習会に於いて、私は日本のプロのサーヴィス人との交流の中で毎年非常に良い刺激を受けてきました。
2008年の今年も講習会を通して皆様と共に仕事ができることをとても光栄に、またとても嬉しく思っております。

2008年6月
Jean-Luc Frusetta
M.O.F.(フランス国家最優秀技術者の称号)審査委員会委員
(メートル・デザール・ド・ラ・ターブル・エ・セルヴィス部門)